髙橋 里雄

大学卒業後、2007年にせたがや樫の木会に入職。生活介護、就労支援等様々な事業所を経て、現在は居住支援のどんぐりホーム上町にて施設長を務める。

利用者さんの帰る場所を作る

この仕事に就こうと意識し始めたのは大学生の頃です。大学は体育大学で、そこで音楽のプロを目指すという異色(?)の学生だったのですが、同時に福祉ボランティアにも携わっていました。
私には重度の障害を持った妹がおり、妹の繋がりから他の家庭や施設へと活動の幅が広がっていき、その過程で千歳台福祉園でボランティアをさせてもらったのが、この樫の木会を知るきっかけになりました。そして気づけば勤め始めて15年という感じです。
今はグループホームと、ショートステイの2つの事業を担当しています。電話対応や事務作業等で日勤の仕事もありますが、基本的には利用者のみなさんが各事業所から帰ってくる夕方16時から、朝お見送りをして掃除などを終わらせた翌日10時の働き方がメインです。
これまでいくつかの事業所を回ってきましたが、このどんぐりホーム上町はより利用者の生活に寄り添った仕事ができると感じています。
数年勤めると異動の可能性はみんなにあります。とはいえ世田谷区内ですし、異動すればその先で新しい出会いが待っているので、私は良い機会だと捉えています。

生活の場だからこそ実現したい安心感と楽しさ

ここでは常時5名の方が生活をし、ショートステイの方が2名体験などの理由で利用しています。共同生活の強みを活かせる団らんの場などを提供していても、利用者の生活や健康を管理させていただいているので気は抜けませんし、みなさんの個々に合わせた生活も考えなくては安心できません。
例えば利用者が望んだものでも、持病がある方が塩分や糖分の高いものを買って来てもそれを全て受け入れることはできません。自由に暮らしてもらいたいという思いはありつつ本人が不利益になるため、全てを受け入れることはできないもどかしさを感じます。
一方で、みなさんと関わっている時間は基本とても楽しいです。生活の中での些細なやりとりやハプニングに、毎日たくさん共感し、ときには微笑ませていただいています。
その中でも、嬉しそうな、楽しそうな顔が見れた時は格別です。施設では毎年一回日帰り旅行に行くのですが、雑談で私が趣味の釣りの話をしていたら、やってみたい!ということになり、昨年の日帰り旅行はアジ釣りになりました。その際の、釣ったアジがその場でフライになるのを見て驚いた様子と嬉しそうな顔は今でも鮮明に覚えています。
またショートステイでは、今まで勤務してきた事業所の方が泊まりに来て再会!ということも多く、これは長年勤務して、多くの事業所を回れたから感じられる喜びだなと思います。

言葉にするのは簡単だけど、奥が深い「優しさ」

この仕事をする上で私が大切にしていることは「底なしの優しさを持つこと」です。タイミングによっても相手によっても必要としているものが違うので、どこまでいっても正解や終わりはなく、 だからこそ「底なしの」である必要があると思います。
また、例えば食事の制限がある人には、健康に良いものを食べてもらうことが優しさと考えますが、そういった改善を促す際には「ダメ」や「禁止」といったマイナスのニュアンスは使わないように心がけています。そして、お土産屋さんなど、買い物が好きな強みを活かしアドバイスをしてご自身で、甘いお菓子だけではなく体に良いものや健康を意識した買い物をした時に「素敵ですね!いいですね!」と、嬉しくなりやる気が起きるような声掛けをして一緒に共感しています。
施設としてのありたい姿も同じです。スタッフ間でも、仕事への意識確認をする機会や勉強会を定期的に設けていますし、新しく入ってきたスタッフにも、まずは料理を作るときでさえ、『おいしくなぁれ』と、利用者さんや職員間はもちろんですが、思いやりや優しさを持って仕事をするように指導します。どんな時でも利用者にとって何がベストかを考えて動ける施設を目指しています。

父から学んだ仕事への向き合い方

こういった考えを持つようになったのは、父の影響が大きいように思います。
妹の障害がわかった時、父からは家族として受け入れる覚悟を持つようにという話をされました。妹は愛情を受けて育ち、父と一緒に行う体操の歌が大好きでした。その一方で、元気に走り回る子どもの歌で、同じように出来ない娘を辛く思い、体操を続けられなくなった父の姿も見ていました。しかし数年後、父が体操を再開しました。また、その頃から父は社会活動にも積極的に参加するようにもなりました。「娘が幸せであればそれで良い」そう考えを切り替えた父の姿がとても印象的でした。最初から全てを受け入れられていたわけではなく、悩みながら葛藤しながら妹と向き合っていたのだと、この仕事についてから思いました。
障害がある方を、どこかで大変だと思ってしまうのは避けられないことだと思います。それでも、自分の感情をコントロールするとともに、利用者さんの幸せを第一に考え、利用者さんの喜び、嬉しさ、様々なことに携われることを私の幸せに、そのような姿勢で今後も仕事に向き合っていきたいと考えています。