甲斐 実

大学を卒業後、せたがや樫の木会の設立と同時に入職。様々な事業所で経験を積み、2022年より居宅支援を行うへルパーステーション樫の木で施設長を務める。

幼い頃から漠然と考えていた福祉の仕事

現在 90 歳くらいになりますが、親戚に障害を持った方がおり、子どもの頃から障害には日常的に触れていました。また、母が看護師として就労支援の事業所で働いていたので職場に遊びに行く機会も多く、福祉という仕事も身近に感じていました。そして大学時代には福祉施設でアルバイトを始め、卒業と同時に設立されたばかりの樫の木会に入職しました。幼い頃から何となくですが、この仕事に就くことにあまり迷いはありませんでした。
入職以降は生活介護の千歳台福祉園、就労支援の下馬福祉工房、喜多見夢工房と様々な事業所で勤務をしてきましたが、現在勤める「ヘルパーステーション樫の木」は、利用者への光の当て方が他とは違うと感じています。多くの施設は、利用者と平日の 5 日間、継続的にどう関わるかに照準が当てられていますが、この施設が担うのは土日の余暇支援や、平日でもご飯やお風呂のお手伝い。仕事や活動からは一歩離れて、スポット的にリラックスできる瞬間を提供しています。

幅広い支援の仕事

ここでは主にヘルパー派遣を行なっています。利用者が直接来る施設ではなく、利用者の元にヘルパーが向かうまでの調整をする事業所です。ご家族やグループホームの職員から申請を受け、登録ヘルパーを派遣したり、私たちがガイドへルパーとして現場に向かいます。
依頼があって動くので、1 日の流れは日によって変わります。ガイドヘルプやヘルパー派遣の立ち会い等、時間が決まっている仕事に合わせて就業時間も調整します。例えば午後 8 時までの入浴介助の依頼が入っていたら、始業は昼ごろからといった形です。そういった訪問の予定がなければ、メールチェックや依頼の割り振り、資料作りなどの事務仕事をしています。
利用者だけではなく、ご家族や他の施設の職員との関わりが多いのもこの仕事の特徴です。この施設に来るまでは、利用者とのコミュニケーションを主に考え、素の部分では寡黙な方だと自覚していましたが、今は電話やメール対応、訪問等で多種多様な方と関わるので、必然的に会話することを意識するようになりました。同じ支援といっても様々な仕事があると今になって実感しています。

この仕事の楽しさをもっと多くの方に知って欲しい

一方で、この業界に入るということは利用者との関わりに興味があってのことだと思うので、私自身、ガイドヘルパーとして現場に出ている時の楽しさややりがいは、やはり格別だと感じています。利用者の楽しそうな顔が見れたり、期待に沿うことができて「また会いたいな」と言ってもらえた時は、この仕事をしていてよかったと心から思います。
反対にむずかしいと感じるのは、利用者の望みや不満をうまくキャッチできず、適切なサポートの仕方を見つけられない時です。はがゆく、不甲斐なさも感じますが、こちらが諦めたら利用者の気持ちは放り出されてしまいます。数打ちゃ当たるじゃないですが、あの手この手で試行錯誤を繰り返すことが唯一のできること。その結果スッキリした笑顔が見られたら万歳ですが、時には「あれ、もしかして私のことで色々考えてくれてるの...?」と利用者が気づいて歩み寄ってくれることもあります(笑)予想していないアンサーが来るのも、仕事の楽しみの一つです。
何がしたいか、どうしたら喜んでもらえるか、利用者の思いを大事にして、誠実にアプローチしていくことをスタッフみんなで意識しています。

変化を楽しめる職場を目指して

施設長という肩書きはあるものの、去年異動してきた私がこの施設では一番の新人です。ここに在籍するスタッフは長年働いている方ばかりなので、私がみなさんの輪の中に入れてもらい、仕事を教えてもらった感覚です。利用者がいない事業所は珍しいかと思いますが、利用者を第一に考え真面目に働く優しいスタッフが揃っています。それはスタッフ同士でも変わらず、話し合い、助け合い、楽しいことも大変なこともみんなで分かち合おうという雰囲気があります。
なので、私が施設長として何かをするまでもないのですが、性格的にも〇〇をしよう!〇〇を目指そう!と考えると視野や行動が狭まってしまうので、流れに身を任せようと思っているのも正直なところです。今の自分に必要なものは自然とやってくると考えているので、周りの変化を楽しんで、受け入れていきたいと思っています。新しい方が入ってきたら、私の初めての後輩ということになるわけですが、経験を伝えながらも押し付けず、一緒に歩んで行けるような上司でありたいと思います。