梶 由香里

地元大阪で就労継続支援A型の事業所に勤めた後、上京を機に2016年せたがや樫の木会に入職。就労支援を担う上町工房に配属され、現在7年目。

人生を変えてくれた出会い

地元の大阪でフリーターをしていた20代の頃。「嫌だなぁ...行きたくないなぁ...」と思いながら日々アルバイトに向かっていた私は、通勤途中の電車でひとりの障害を持った方と出会い、生活が一変することとなりました。
「今日は良い天気だね」「その帽子かわいいね」電車で顔を合わせる度にその方は明るく話しかけてくれ、わずか10分程の時間でしたが、次第に私はその時間を楽しみに思うようになり、嫌だった仕事にも楽しく向かえるようになっていきました。そして、いつもどこに向かっているのかと私からも質問をしてみると、作業所に仕事に行くとのこと。作業所という存在も、そういった働き方があることも、初めて知った瞬間でした。仕事を始めるに至ったのは、そんな魅力的な方との偶然の出会いがきっかけです。
大阪で勤めた後、上京するにあたりこの上町工房を選んだのは、職員が率先して場を盛り上げようとしながら、とても楽しそうに働いていて、思っていた施設の印象とは大きく違っていたからです。
新人の頃、上司が「真面目にふざける」と言っていたのが今も心に残っています。その時から時間は経っていますが、今も変わらず、利用者の楽しそうな顔を引き出したい、笑ってもらいたい、と全スタッフが奮闘しています。

毎日が全く新しい1日

1日の始まりは職員ミーティングから。依頼を受けている仕事がいくつかあり、今日は何をするか、その組み合わせや、仕事内容を利用者の皆さんにどのように伝えるかを考えます。そして利用者の皆さんが通所され、いざ仕事が開始されると、それ以降、体操、食事、散歩、おやつ、掃除...と分単位でやることが決まっています。
自由度が少なく大変なのでは?と思われるかもしれませんが、毎日同じスケジュールを刻むことが、安心や力の発揮に繋がる方も多いですし、いつもの流れがあるからこそ、私たちは利用者の小さな変化や違った様子に気づくこともできます。変わらないことが、変わっていることを教えてくれる。やることは同じでも、1日たりとも同じ日はないんだなと実感します。
そして、1日の終わりもミーティングです。誰もが、どんな些細なことでも話しができ、聞ける雰囲気があり、私はこの時間にとても救われています。支援で悩んでいること、気になったこと、失敗...それらを職員全員で共有し、解決策を模索します。飲みに行ったりと、仕事を忘れることで発散できるものもありますが、仕事の場で問題と向き合い、それを乗り越えるヒントを得られることは、発散以上の効果があるように感じています。

全ては丁寧な関わりの積み重ね

仕事をする上でまず意識するのは「自分が楽しむこと」です。場に馴染むのに時間がかかる人やうまく楽しめない人もいるので、楽しみ方のお手本を見せ、安心して楽しんでねという空気を作っているつもりです。
その上で「利用者の気持ちに寄り添うこと」を心がけています。経験を経てわかることは増えていきますが、だからこそ決めつけにならないよう、前後のやり取りや細かな表情に気を配り、常に相手が何を考えているか推測しながら仕事をしています。
正解がないので余計に難しいですが、大切なのは「丁寧に向き合うこと」だと思います。ベストな支援の方法が見出せなかったり、そもそも考えている事がわからなかったり、心苦しい時ももちろんありますが、その中でも丁寧に向き合い続けることが唯一の打開策。顔がパッと明るくなる瞬間や、わかってくれた!という表情に出会えると、ホッとすると共にこの仕事をしていてよかったなぁと心の底から嬉しくなります。
この仕事=大変なイメージが強いかと思いますが、「やりがいしかない」というのが私の感覚です。

利用者も職員も過ごしやすい環境づくり

そんな私も、1年目には何度も辞めたいと思ったことがありました。利用者の考えていることや気持ちが全くわからず、そのため、もちろん良い関係も築けない。毎日ただ辛かったことを覚えています。その中で、大きな気づきと変化を与えてくれたのが現施設長です。あまり言うと褒めすぎだと怒られるのですが(笑)、支援の仕方、幅広い知識、相手に合わせたアドバイスとその伝え方、全てに影響を受け、またその存在は私の目指すべき理想の姿にもなっています。
ただ、いつまでも誰かに憧れたり、誰かから学んだりするばかりではなく、私自身が率先して職場を引っ張っていく時期に来ているとも感じています。まだまだ学びの連続ではありますが、支援の幅が広がってきたり、職員が手助けを必要としている瞬間がわかってきたり、経験と共に少しずつ自分の立場も変わってきたので、これからはそういった全体に目を向けた働き方や関わり方も意識していきたいと思っています。